日本をテーマにした作品を、57名のパートナーと。
2023年11月ー。
日本をテーマに、日本のどこかを舞台にした作品を書きたい!と思い立ってから、8ヶ月。
これでもかと”ニッポン”を描いた『雫の星語り~Only God Knows~』が、7月7日の夜、全15公演の幕をおろしました。
総勢57名の、最高のキャスト。いや、もはや、キャストという枠すらも超えた、57名の最高のパートナー。そんな風に思っていた素敵な皆様と、誰1人欠けることなく、走り切れたこの公演は、自分にとっても、ACTMENT PARKにとっても、かけがえのない財産となりました。
むしろ、欠けるどころか、増えてるんじゃないか!?というほど、日に日に高まっていく熱量に、ただただ興奮していました。
今日は、そんな熱量たっぷりだった雫の星語りを振り返っていきたいと思います。
涙し、そして、震えた、場当たり稽古
熱量の凄まじさを物語っていたのが、VEGAチームの場当たり、M0のシーン。
場当たりっていうのは、演出家にとっては、ある意味、戦いのようなもの。これまでの公演でも、場当たりで心動いた事なんて、当然、0です。動かしてる暇なんてありません。
(※場当たりとは… 本番の会場にセットを組み、立ち位置や音響・照明などのキッカケ、全体の段取りなどの確認をする舞台稽古のこと。)
ただ…、あまりの凄まじさに、あまりの迫力に、あまりのエネルギーに、自然と涙が溢れていました。それが、VegaチームのM0。
隣で見ていた、ユキジと思わず顔を見合わせ、ばちばち力を込めたハイタッチ。
あの瞬間、客席で見守っていた誰もが感じるほどの凄まじいパワーが劇場中を満たしました。
これだ。これだよ、劇場の良さ!ミュージカルを超えた作りたいエンタメの良さ!
これは、いけるぞ!(お客様に喜んでもらえるぞ!)
あの瞬間、確信に変わりました。
家でYouTubeを見たり、Netflixを見たりするのとは、また違った興奮。日常生活で、なかなか流す事の出来ない質の涙。
あの瞬間、自分たちの力は、お客様をこんな感情や状態に出来るんだ!と肌で感じ、全員が、一つになった気がしました。
「千秋楽まで、最高のもの、つくりあげるぞ。届けるぞ。」と。
そこには、もちろん、前日まで場当たりをしていたAltairチーム、Denebチームが、とてつもない集中力で、完璧に時間通りに場当たりを終わらせ、最後のVegaチームにバトンを繋いだからこそ生まれた力。
まさに、57人全員で掴み取った、成功の瞬間でした。
自分の全てを捧げて・・・
肝心の公演の中身については・・・。
今の自分の全てを捧げて世に送り出したこの世界。劇場にお越しいただいたお客様皆様が肌で感じ、これでもかと、受け取って下さっていたと信じています。
それは、終演後の嬉しいご感想や投稿から、ありがたいほど感じさせていただいておりました。
大千秋楽でも、演出・脚本・そして本作のプロデューサーとしてマイクを握らせていただきましたが、今回は、Vega、Deneb、Altairの3チーム。
どんな事が起きるのか、相当なシミュレーションをして本作に臨みましたが、やはり想定していた以上の想定外は起きる物。(そのせいで、キャストに負担もかけちゃいました。ごめんなさい!)
輝いていた、2人のシズクと神様のような方々
でも、3チームにした意味は、多いにありました。
当然ですが、誰1人として同じ人は存在しなくて、その違いは、ちゃんと舞台上にも現れました。
主演のシズク2人、阿紀ちゃんと祐香をとってみても、全然違うアプローチで、全然違うシズクを最高のシズクに育て上げてくれました。
阿紀シズクは、最初から強い意志は持っているけど、その飛ばし方や飛ばす向きが分からない。でも、最後に、確固たる向きを見つけて歩き出すシズク。
祐香シズクは、意志すらあるかも分からず、ただそこに立っている事しかできなかったけど、最後には明確な意志を持って歩き出すシズク。
自然とそうなっていった気がします。
スタート地点は違うのに、ゴールで一つになる。
この2人のダブルキャストだからこそ、生まれたシズクであり、自分自身も演出家として、人として、その人個人の魅力を存分に浴びさせてもらえた、最高の2人のシズクでした。
そんな彼女たちの周りにいつもいたのは、ベテランで何もかもが圧倒的なダラス(ひのさん)、ミサト(美郷さん)、シラトリ(白鳥さん)、そして、ミヤタカ(NAOYAさん)の4名様。
これほどまでに、最高なキャスティングをさせていただき、さらに、想像の遥か上をいくパフォーマンスと人間力と、もう全てを注いでくださった事は、自分にとっても、ACTMENT PARKにとっても財産で。
こんなにも凄まじい方達が、まるで、この舞台の神様のように、どっしりと、ブレない軸で、この雫の世界を創造してくださっている。その事に、日々感動を覚えながら稽古場に向かっておりました。
日本のミュージカルの未来は明るいよ
さて、クニヌシとニコ。
物語の超重要人物となるこの2役は、初めましての2人も含め、全員オーディションで、即決させてもらった方々でした。
ニコ役:咲季、ヰエナ。
クニヌシ役:里紗、莉奈。
この4人。
既に色んなところで活躍しているけれど、間違いなく、これからの日本のミュージカルを引っ張っていくと断言できます。
もし、その未来が待っていないのだとしたら、そもそもおかしい。他の製作陣はどこを見てるんだって。だったら、俺が、その場をつくる。そんな風にすら思わせてもらえたメンバーでした。
ほとばしる、その個性
各チーム、1番色が違ったのは、間違いなく、モモハナバカラの3人組でした。
初期の構想段階から、今作の世界のいたるところにいるような、なくてはならない3人でした。
3チームとも見て下さった方は、特に感じたと思いますが、まあ、こうまで違うか、と。笑
モモ:バカなフリした優しいリーダー、極妻、大衆演劇
ハナ:高飛車ブランドお姉さん、天然ぶりっこ、ガサツ女
バカラ:麗しのいじられ、強がり負けず嫌い、クールバカビューティー
稽古をするたびに、セリフが増え、セリフが代わり「これは、Vegaチームだけのダメだしね。」「Denebは、今のダメ出しは聞かなくていいよ。」「Altairだけ、行くんだお嬢ちゃんってセリフ、足してもいい?」みたいな事を何度言ったことか(笑)
登場シーン自体は、決して多くはないけれど、登場したら来たー!ってなって嬉しかったし、ただただ笑って見てられるのに、絶対見た人の心に残る。そんな”和”だからの神を、見事に体現してくれました。
ちなみに・・・、きっとご本人達も気づいてはいないと思いますが、実は、本作の至る所に、モモハナバカラを象徴する存在が登場しているんです。(この事実と理由と思いを知った時、俺も震えました。音楽監督の友華さん、天才です。笑)
実は、本作の”真のテーマ”を担っていたサイトーさん
そして、サイトー。
これまた、今作の、真のテーマを現代に落とし込む、超重要人物。
実は、2幕の台本、キャストの皆様にお渡ししてから、ごそっと書き換えさせてもらった事がありました。
ただ、その中で唯一、全く変わらなかったシーン。それは、最後にやってくるミサトとサイトーのやりとりのシーン。
一見、M26のリプライズ曲(あの曲ほんといいですよね。やっぱ音楽、天才)が、今作のラストで間違いはないのですが、この作品のテーマは、実は、最後のミサトとサイトーで完結しているのです。
どういう事かって?
あ、ここまで話すと、スタッフ陣に怒られるので、続きは、Blu-ray&DVD特典の【クリエイターチーム、作品に込めた思いと、裏テーマのあれこれ振り返り対談】でお話しさせていただきます!笑
(Youtubeで、一部公開しちゃうかも!?)
サイトーさんも、まあ見事に、三者三様、作りが違ってみんないい。
ちなみに、サイトーという名前が、漢字ではなく、カタカナの理由。これも、また、ほんのりこだわりがあります。というか、近松だけ漢字、という事にもこだわりがあります。
これも、いつか、お話しましょうか。笑
見事なまでに、最高の役者達
キツネ。超重要人物。
いや、何人、重要人物出てくるねん!って話だけど、自分の作品に、重要じゃない人って1人も出てこないんですよね。まあ、そりゃそうか。
もあなキツネと彩喜キツネ。お互いがお互いの良さを認め、時にライバルとして、互いの良いところを盗み合う。いい意味で「私がキツネだ!」の、密かなる闘いも心の奥で繰り広げられていたように思います。笑
でも、お互いリスペクトしあっているから、相乗効果でどんどん二人ともよくなる。
その結果、最高に素敵なキツネが仕上がっていました。その上で、それぞれの違いを生み出す。なんて素敵なキツネなんでしょう!って。
2人とも、もう可愛くて可愛くて仕方ありませんでした。
ウマル。
愛らしい存在。
もう、等身大の蓮と小次郎がそっくりそのままそこにいて、ウマルが2人だっけ?あれ?2人がウマルだっけ?となってしまうほどほど、ウマルだった2人。
きっと、本当は甘えたくて、子どもでいたくて、でも、いまは大人になりたくて。でも、大人って何かは分かってなくて。誰よりもパパの事が大好きで。でも目の前にいるのは父上で。
今の2人、超魅力的だったからまた一緒にやりたいし、大人を見つけた2人とも、また一緒に作品作りもしたいね!
近松/ホーキンス。
ここもまた、今作で、唯一漢字のキャラクターにした、脚本家としてのこだわりが、詰まりに詰まっています。
それは、お客様の中に何か、これ!といった明確なものを残すってわけではなく、日本を舞台にしているからこそ、ニッポンを舞台にしているからこそ、感じて欲しい思いを込めています。
演じてくれた、和希&Taichiにも、明確な思いは稽古の時に、さらっと1回しか伝えてません。(しかも、こういう理由だよって言い方じゃなく、近松ってのはね…っていう文脈で。)
それぞれが、最後の最後まで必死にこだわって、近松を紐解いてくれて、ホーキンスと重ね合わせて、試行錯誤しながら魅力的でカッコ良くもダサくもあるキャラクターを作っていってくれました。
あ、ホーキンスが、何だか外国っぽい名前にしているのも、実は、脚本家の隠れた面白ポイントこだわりがあったりします。(これは、対談の中で、話すかも!?)
演出をする上での、主観と客観
ちなみに、余談ではありますが、自分が演出する時、いま言うべき事と、いま言わなくて良い事を、めちゃくちゃ考えながらキャストに伝えます。
多分、自分の特技は、脚本家や演出家のエゴを一切封印し、限りなくお客様に近い目線で(=フレッシュに楽しんでいただく気持ちで)芝居を見れるという事。
「この部分は、単なる脚本家や演出家のこだわりだから、お客様は求めてないよな。」と思うような事は言わない時もあるし、逆に「このこだわりは伝えないと作品がブレる!」って時には、出来るだけ正確に伝わるように、言葉を選びに選んで伝えます。(という努力は、しています笑)
あとは、その人の今の状態、様子、体調、考えている事もキャッチして。
その言葉選びやキャッチした情報の判断は、間違えないように、意識しています。
そして、キャストが作品上で提示してくれた芝居やエネルギーは、隅から隅まで、絶対に取り溢さないように。
だから、自分の演出家としての仕事って、キャストが繰り広げる、最高のお芝居を見て「こうした方が良いよ。」「こうした方がお客さんに伝わるよ。」って感想を伝えるだけの、めちゃくちゃ楽しい仕事なんですよね。笑
(あ、もちろんめちゃくちゃ細かい交通整理はします。ここで振り返って、とか4歩でここまで行って。とか。)
でも、演出席という特等席で、毎日最高の芝居を見て、感想を伝えて、次の日にはさらに良くなっていく過程を見れて、誰よりも楽しんでいた2ヶ月間だったんじゃないかと思います。
そして、真の神様達である、神民、登場。
神民の皆様。
尊敬。崇拝。もはや、神そのもの。ラブ。
これ以外の言葉が見つかりません。笑
ACTMENT PARK作品1作目から「自分の作品に、自分の作る世界に、アンサンブルなんて、存在しないんだよ!」って、声高らかに宣言しておりますが、今作はもう、ほんと、その通り。
そんな事、言わずもがな。どこを見ても楽しすぎるし、感情があったし、個性があったし、ドラマがあった。
その結果、毎日毎日【(絶対に取りこぼさないようにしたい)演出家 vs (次から次に最高のモノを提示してくる)神民】を感じておりました。
これ、どういうことかと言うと・・・。
「もう、見どころありすぎて、どこ見たら良いん!!どこ見ても楽しいって何やねん!!なんなん、今の目線!・・・と思ったら、こっちでは、隣の人の肩に手添えてた!ちょ!寄り目!!うぉー!え、ちょっと、今の動きどうなったん!あれ?ちょっと今日疲れてる?(笑)え、このシーンの感情設定、昨日からちょっと変えてきてるやん、そっちの方が良い!!もしかして、その神官、自分の正義に疑問符投げかけてる?神官ブチギレてるー!!うひょー!顔でウマル殺されそう〜!笑」
もう、毎日、神民一人一人とのバトルです!
その上で、ストーリーを動かしていく存在のキャラが、ブレないように、作品上で死なないように、お客さんが作品上で迷わないようにする事も考えないといけない。
ふふふ。甘く見てもらっちゃ、困りますよ。俺は、絶対、あなた達の一瞬一瞬を見逃しませんから!と。だから、その分、好きなだけ、思う存分生きてください!と。
演出家として、成長させてくれた
最後、大千秋楽後にAltairチームの神民みんなが、ニヤニヤした顔で、ロビーにいた俺のところにやってきて
「一馬さん。実は、本番入ってから、一馬さんのダメ出しをヒントに、裏設定でやってた事ひとつあったんですが、どこか気付きました?」
と問われ・・・、
「実は、◯◯のシーン、私たちみんな◯◯って設定でやってたんです。」
と言われた時は「うーわ!最近、なんか、△△やなって思ってたけど、そういうことやったんか!それは、俺取れてない!うわ、悔しいー!何それ、めっちゃおもろいやん!」と叫び声を上げるほどでした(笑)
演出家として、リベンジしたい。笑
(〇〇が、どこの何かに気づいた人は、すごいと思う。笑 気づいた人は、教えて欲しい!そして、これはAltairだけじゃなく、全チームそれぞれ、色んな設定で作り上げてくれてました!)
でも、そんな毎日が、自分を演出家として、また一つ、成長させてもらえたように感じています!
それぞれのチームカラー
きっと、色んな事が重なり合って、時に、ユラユラ不安定に揺れながらも、それでも、劇場入りしてから抜群のチーム力で、ダンスは揃うし、みんなイキイキしてるし、飛んでくるエネルギーが半端じゃなかったVEGA神民達。
得意とする事がみんな違いすぎて、途中までは、それぞれの個々だけが良くも悪くも際立っていたものが、ある日を機に、その個々が融合し出して、チームとして、作品として、その上で、個々としても輝きを放っていたDENEB神民達。
きっと本来は、1番バラバラでもおかしくないのに、ひとたび一ノ瀬に入り込んだら、息ぴったりで、毎回、全力で一ノ瀬の中で生きて、輝いて、毎回、新たな何かを生み出そうと、演出家に挑戦してきていたALTAIR神民達。
同じ作品でも、こんなに違う光を出してくるんだ。と、再認識させられた公演でした。
この振り返りの内容、演出家として書いてるの?脚本家として描いてるの?プロデューサーとして書いてるの?そもそも、その立場の人って、こんなに言及ってするもんだっけ?(笑)と疑問符も投げかけられそうです。
ですが、時間を使ってでも書きたい!書き残したい!そんな風に思い、また一つ、キャストの皆さんが自分に、脚本家・演出家としての自信と勇気を与えてくれた。お客様とこの世界での時間を共有できて、手を取り合えた。そんな風に感じる公演でした。
配信は、7月21日(日)23:59まで
配信は、7月21日(日)23:59まで続きますが、
Blu-ray特典の【クリエイターチーム、作品に込めた思いと裏テーマのあれこれ振り返り対談】も、一部、近日公開いたします。(配信後になっちゃうかも・・・)
この「雫の星語り~Only God Knows~」という作品が、一ノ瀬の町に生きた人々が、未来永劫、輝き続ける。そんな願いを込めながら。
改めて、雫の星語りを振り返って。雫の星語り~Only God Knows~(東京公演)を、応援してくださった皆様、ご来場くださったお客様、出演してくれたキャスト様、事務所様、スタッフ、関わって下さった全ての皆様へ。
この場を借りて、感謝の思いを。
本当に本当に、ありがとうございました!
OK!! Everybody!! Put your hands!! To be continue!!
ACTMENT PARK
『雫の星語り~Only God Knows~』
脚本・演出・作詞・プロデューサー:岡本一馬